フェドスキノФедоскино/Fedoskino訪問の続き。時間になると、ガイド氏がやってきて見学開始です。
小箱づくりの最初の工程は箱部分を作ることですね。パルプのシートを木型に何層にも巻き付けて、澱粉糊で貼り付けます。巻き付ける数は作品によりますが、最大で25層。小さいサイズの箱だと10層くらい。そしてプレスにかけてしっかりくっつけ、1か月常温で乾燥させます。
次は、乾燥済みの箱に油を染み込ませる工程です。亜麻仁油に箱を沈め、オイルを吸収させてから、80~90度の釜でさらに2週間乾燥させます。昔は安かったため大麻の油を使っていたのですが、大麻の栽培が禁止されてから亜麻仁油に切り替えられたとのこと。
その後、ここから絵付けの工程です。油絵具で絵を描き、その上からニスを塗って目の細かな紙やすりをかけます。その上からさらに絵具を重ねて、陰影や奥行きを出します。何度もこれを繰り返して、美術館にあるような絵画作品のような絵を作り出します。こちらは製作途中の絵。
絵に紙やすりをかけているところ。
最後に、工房の歴代の職人たちの力作が展示されていました。
フェドスキノではヨーロッパやロシアの美術館に収蔵されている有名な絵画を模倣していました。そのため独自の様式というものはなく、風景画も肖像画も静物画もあります。
フェドスキノではヨーロッパやロシアの美術館に収蔵されている有名な絵画を模倣していました。そのため独自の様式というものはなく、風景画も肖像画も静物画もあります。
こちらは救世主キリスト聖堂。
絵付けする際には、工房内の委員会が、絵付師のアイディアを作品化していいかどうか審査するそうです。絵の良し悪しを評価するだけでなく、その作品は採算がとれるかどうか、販売価格をいくらにするかといったことにまで裁量権があります。絵付師は、どんな絵を描きたいか、そのためにどの材料がどれくらい必要かを申告し、承認を受けなければならないとのこと。そんな事情があるのか。
承認についてのエピソードを伺いました。あるとき一人の絵付師が委員会に黙って自分の描きたかった絵を描きました。出来上がってから委員会に見せたところ、相当に厳重注意を受けたそうです。その絵付師の描いたのは、水辺にいる裸の男女の姿だったため、委員会は「あからさますぎる」と批判しました。しかしその絵付師は「20年後には、これがスタンダードになる」と主張。しかも早々に買い手が付きました。慧眼の人に認められてよかったですね。それでも彼女は厳重注意を受け、もう二度とこのように自分のアイディアを自由に描くことはできなくなってしまったそうです。
また、ソ連時代は作品1個につき絵付師に支払われる報酬が決まっていたそうです。絵のクオリティには第1級、第2級とあり、第1級は月に1個しか作れないほどの難しい作品。第2級は量産できるもの。しかも、腕のいい絵付師であっても給与面でいくと第2級の作品を作った方がトータルでの報酬が多かったそうです。
フェドスキノではこの細密画製作を教える学校ができたそうで、入学者を募集しているのですが、残念ながら就職先に問題があります。ガイド氏曰く「あなたたち、買ってくれないじゃない。」職人さんたちの生活のためには売上が必要ですが、そこまでたくさん売れないそうです。例えば2020年の1年間での生産個数は2000個。コロナで観光客がいない分、売れ行きの目処もたたないでしょうが、それにしても意外と少ないです。とはいえ工房の売店にあった細密画の箱は、土産屋の量産品よりも明らかに高品質のものばかりでしたが、安くても7000R台、上は十数万ルーブルという高級品ばかりだったので、気軽に買うこともできず。余程気に入った作品でなければ、財布の紐は緩まないでしょう。芸術が生き延びるのは大変だ……
フェドスキノではこの細密画製作を教える学校ができたそうで、入学者を募集しているのですが、残念ながら就職先に問題があります。ガイド氏曰く「あなたたち、買ってくれないじゃない。」職人さんたちの生活のためには売上が必要ですが、そこまでたくさん売れないそうです。例えば2020年の1年間での生産個数は2000個。コロナで観光客がいない分、売れ行きの目処もたたないでしょうが、それにしても意外と少ないです。とはいえ工房の売店にあった細密画の箱は、土産屋の量産品よりも明らかに高品質のものばかりでしたが、安くても7000R台、上は十数万ルーブルという高級品ばかりだったので、気軽に買うこともできず。余程気に入った作品でなければ、財布の紐は緩まないでしょう。芸術が生き延びるのは大変だ……
そのため、注文製作も受けており、プーチン大統領やオバマ元大統領の肖像画を描いたこともあったそうです。一般人でも、有名な絵画の顔をプレゼントする相手の顔に変えて描いていてほしいという依頼をする人がいるようです。
こちらはこの工房で仕事をしてきた歴代の職人たち。
さて、隣の博物館を簡単に見学して、帰ります。こちらは外国人料金で500R。詳細な紹介は割愛しますが、フェドスキノの作品だけでなく、近くのジョストヴォの作品も展示されていました。
フェドスキノには休憩したり軽く食事したりできる場所がなさそうだったのですが、271番は午後にしばらく途切れる時間帯があり、帰りのバスまで1時間以上待たなければなりませんでした。どうやって時間を潰そうかと考えていたら、目の前を「ロブニャЛобня Lobnia」と書いたバスが通りました。ちょうどいいので、乗ってしまいます。こちらは56Rでした。
終点、ロブニャ駅。
ちょうどМЦД/MTsDの列車が停まっていました。これに乗ってモスクワ中心部に戻ります。サヴョーロフ駅まで40分ちょっと。
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