ロシアの地方都市から出入国をすると、別室に呼ばれるなど怖い思いをする確率が高いと言われていますが、在留邦人の間でウラン・ウデからモンゴルへ抜ける国境は比較的マシだとの話を聞きました。一度試してみたかったのですが、事情があってそのチャンスが巡ってきました。
移動手段は鉄道またはバスです。
2025年現在、鉄道の場合、イルクーツク発ウランバートル行は週2便あり、ロシア発モンゴル行きは火金、モンゴル発ロシア行きは土日に出発します。途中停車駅は、ロシア側だとスリュジャンカ-1Слюдянка-1/Slyudyanka-1)、ウラン・ウデ旅客駅(Улан-Удэ Пасс./Ulan-Ude Pass.)、ジダ(Джида/Ddzhida)、ナウシキ(Наушки/Naushki)、モンゴル側はスフバートル(Сухэ-Батор/Sükhbaatar)、ダルハン(Дархан/Darkhan)、ズーンハラ(Зуунэхараа/ Züünkharaa)です。
ロシア鉄道によると、イルクーツク発ウランバートル行の発着時刻と料金は以下の通り。一等寝台と二等寝台があります。
ウランバートル発イルクーツク着は以下。こちらはなぜか二等寝台しか設定がなく、購入できる車両も1両しかないので、ロシア鉄道に割り当てられている座席が1車両分ということか。そして日曜日の便はアプリで購入できず、「端末機を利用してください」と表示されます。通常この表示は近郊列車のように席予約不要、事前予約不可の場合に出るのですが、つまりモンゴルにて現地購入するようにということなのでしょう。
バスは1日1便あり、朝7:30にウラン・ウデ及びウランバートルのバスターミナルを出発します。所要時間は約12時間。ほか、金・日は19:00発の夜行便もあります。またウラン・ウデからスフバートル行きも1日1便、13:00発で運行されています。逆方向だと5:00スフバートル発です。
このチケットはバスターミナルで紙に手書きで発行されるので、最も簡単な入手方法は現地での直接購入です。事前に確保したい場合は旅行会社経由で可能ですが、即時発行はできないため時間に余裕をもって注文しなければなりません。そして乗車時にもチケット原本が必要なので、旅行会社からピックアップする手間がかかります。
例えば以下の旅行会社で可能です。
https://welovebaikal.com/tickets_mongolia
実際にやってみました。ウラン・ウデのバスターミナルに赴き、翌日朝の便を予約しました。バスターミナルは撮影禁止のため、あまり写真を撮れず、あしからず。
奥のベージュと茶色の建物がターミナルです。この中にチケット売り場や待合室があります。
入ると2部屋あり、どちらにも売り場窓口があります。ちょうど客足が途絶えたので、ここに並びます。
翌日朝のウランバートル行きを買います。パスポートを出すと、中の係員がボールペンで必要情報を書き込んでいきます。料金は3000Rです。
ここにも募兵ポスターが。
翌朝。7:00には来るようにとのことだったので、それより少し早く到着。定刻にバスもやってきました。
この日、座席は7割方埋まっていました。バスはロシア側で一度休憩を取ります。トイレは有料で30R。この日のドライバー氏は全員戻ってくる前に走り出し、乗客に止められていたので、時間厳守で戻らないと危険でした。
次の停車場所は国境前です。本物の国境の手前に小さな建物があり、制服の治安機関職員がバスに入ってきて全員のパスポートを確認します。ロシア人とモンゴル人は目視のみですが、それ以外の外国人はパスポートを回収され、一緒に下車するように指示されます。下車すると、「登録するので待つように」と言われ、彼が戻ってくるまで路上で待機します。15分ほどで戻ってくると、パスポートを返却され、再びバスに乗ります。
バスはさらに先に進み、ほどなく見えてきたもっと大きな建物前で停車しました。ここが国境で、全員すべての荷物を持って中に入ります。パスポートコントロールと税関を全員一緒に通過するのですが、ドライバー氏が「外国人は時間がかかるから、最初に通してください」とほかの乗客に伝え、先頭に回してもらいました。ありがたいのですが、逆に不安。一体どれだけかかるのか。
国境管理官から声がかかり、パスポートコントロールのブースに向かいます。窓口は2つ。モンゴルへの渡航目的、行先、宿泊場所、その後の行先を聞かれましたが、口頭で簡潔に答えたのみで、それ以上の追及はなく終了。ちなみにロシア人やモンゴル人だと通過するのが本当に早く、質問もほとんどないようでした。
続いてその奥にある税関へ。X線の検査機があるのですが、僕は鞄を開けるように言われただけで、係官が上からのぞき込んで終了。大荷物を抱えたほかの人々も、特に引っかかっている様子もなく、続々と手続きを終えて出てきました。ちなみにここにもトイレがあり、清潔で、無料で使えます。
全員が手続きを終えると、バスに再び乗車し、今度はモンゴル側の国境へ向かいます。モンゴル側の国境管理施設はロシア側より大きく広々としていて、中が真っ白で新しいようでした。モンゴル側でも全員すべての荷物を持って下車し、同様にパスポートコントロールを通過します。ここでは指紋採取と顔写真の撮影の指示くらいしか国境管理官からの発言はなく、こちらの方が早く通過できました。
再びバスに乗って出発すると、ちょっとしか進んでいないのに再び停車しました。何事かと思っていると、どやどやと何人かが乗り込んできます。手には分厚い札束が。おお!両替商の集団です。
レートはどの両替商も全員同一で、この日は1R=42MNT(トゥグルグ)。闇カルテルや。気になるのが、こういうときいくら両替するか問題。隣のロシア人3人組は、明日朝に市内の銀行・両替所が開くまでしのぐ分として、3人で5000R両替するとのこと。僕も少額を確保しました。 すでに正午をとうに回っていました。この次の休憩所はランチを兼ねています。
さっそく両替したトゥグルグを使って食事します。前に並んでいた、同乗者のおっちゃんにお勧めを尋ねると、麺とペリメニ入りのスープにするとのこと。それはうまそうです。
ペリメニのほか、細かな肉片も入っています。味からして、間違いなく羊肉。薄味で肉の風味がしっかり分かります。胃袋に沁みました。
この食事処の隣には小さな商店があります。酒コーナーにて、あの国民的ビールを発見。思わず手が伸びそうになりました。
ここから先が長かった。スフバートル、ダルハンを通り、もう一度休憩を挟んで、暗くなってからもまだまだ進みます。
終点の新ドラゴン・バスターミナルに到着したのは20:30過ぎでした。予定では19:00到着でしたが、運転手曰く、国境通過と渋滞でこれくらい遅くなったとの弁。いったんターミナルに入り、フリーWifiを拝借しました。
元々あったドラゴン・バスターミナルから最近ここに移転したということで、明るく広々としています。ATMはありましたが、両替所はありませんでした。
同乗していたロシア人はアサヒ・スーパードライを早速飲んでいました。「長距離移動のあとは、なぜかいつもビールが飲みたくなるんだ。昔はアサヒビールはどこでも売っていたんだよ。うまいね」と言いながら(ロシアでは、以前は大型スーパーであればどこでも買えましたが、今では第三国からの輸入品がたまにある程度)。
このバスターミナルは中心部からかなり離れていますし、付近に宿がないので、タクシーやバスに乗り換えてさらに移動します。ターミナル入口でタクシーの運転手が客引きしていますが、交渉も面倒ですし、市内バスが何本も目の前から出ているので、これに乗車しました。ウランバートルは1乗り1000MNT(約42円)。前方の入口から乗車し、運賃箱にお金を投入して座席へと進みます。現地の人々は「Umoney(ユーマネー)」というICカードを使用していますが、売り場も限られていますし、なくても乗れるので、数日程度の滞在であれば1000MNT札を数枚手元にキープしておくのが良しです。
宿に着いたのは22:00頃。長い一日でした。仕事仕事。